
JB64W-3型ATのオーナー様より、サスペンションセッティングのご依頼を賜り、作業を実施いたしました。併せて、タイヤ交換のご依頼もございました。サスペンションは、最もシンプルな交換部品構成であり、コイルスプリングとダンパーのセッティングとなります。コイルスプリングとダンパーは、セットでセッティングされています。モトレージTERRA HOTコイルスプリング・サスペンションキットを採用し、ダンパーはドイツ本国ビルシュタイン単筒式ダンパーです。車高は20mmアップとなり、街乗りストリートから未舗装路ダート路面まで、必要最低限のジムニーの車高が設定されており、非常に優れたセッティングとなっています。
コイルスプリングのバネレートは、ダンパー減衰力に最適な値に設定されています。ダンパーは単筒式ガス室別構造を採用しており、ガス室はシリンダー下部にフリーピストンによってダンパーオイルと隔てられています。ダンパーガス圧が維持されていない場合、ダンパーピストンがストロークする際にキャビテーションやエアーレーションが発生し、ピストンのオリフィスを気体が通過してしまい減衰力が発生せず、減衰力不安定な状態となります。ガス室がフリーピストンによって完全に分離されているため、キャビテーションの発生が抑制されます。ガス圧力がオイルへかかっているので、対応したピストンスピード域ではキャビテーションは押さえ込まれています。また、ジムニーのクロスカントリー走行時におけるダンパーオイルの油面揺らぎによるエアーレーションもキャビテーションの要因となりますが、ガス室完全分離型ダンパーはエアーレーションの発生も抑制します。さらに、ビルシュタイン社製シリンダーは冷間圧延製造による大量生産品でありながら、高剛性を有し、ダンパーストロークによる圧力変化時にも歪みにくく、性能を重視した設計となっています。単筒式構造によりピストン径が大きいため、オイルの通過量が多く、素早い減衰力を発生させやすい特性を持っています。さらに、ピストンを接続するピストンロッドには上質なメッキが施されており、オイルシールへの摩擦低減と耐久性の向上を実現しています。
ダンロップ・グラントレックXS1/185/85R16をセット。MTタイヤとATタイヤの中間のようなスタッドレスタイヤ。トレッド面の圧力分布が気になるタイヤです。ステアリング操舵時にフロントバンパーの干渉は水平路面ではありませんが、ストローク時に干渉する可能性はあります。
サスペンションセッティングに誤りは存在し得ません。従って、ここからラテラルロッド、サスコントロールアーム、サスブッシュによるバインディングセッティング、外装カスタム、ガード類のプロテクションなど、更なるセッティング箇所が存在します。しかしながら、まずは誤りのないサスペンションセッティングの方向性を確立することが極めて重要です。