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10月, 2025の投稿を表示しています

JB64W-3型ATのサスペンション・セッティング

JB64W-3型ATのオーナー様より、サスペンションセッティングのご依頼を賜り、作業を実施いたしました。併せて、タイヤ交換のご依頼もございました。サスペンションは、最もシンプルな交換部品構成であり、コイルスプリングとダンパーのセッティングとなります。コイルスプリングとダンパーは、セットでセッティングされています。モトレージTERRA HOTコイルスプリング・サスペンションキットを採用し、ダンパーはドイツ本国ビルシュタイン単筒式ダンパーです。車高は20mmアップとなり、街乗りストリートから未舗装路ダート路面まで、必要最低限のジムニーの車高が設定されており、非常に優れたセッティングとなっています。 コイルスプリングのバネレートは、ダンパー減衰力に最適な値に設定されています。ダンパーは単筒式ガス室別構造を採用しており、ガス室はシリンダー下部にフリーピストンによってダンパーオイルと隔てられています。ダンパーガス圧が維持されていない場合、ダンパーピストンがストロークする際にキャビテーションやエアーレーションが発生し、ピストンのオリフィスを気体が通過してしまい減衰力が発生せず、減衰力不安定な状態となります。ガス室がフリーピストンによって完全に分離されているため、キャビテーションの発生が抑制されます。ガス圧力がオイルへかかっているので、対応したピストンスピード域ではキャビテーションは押さえ込まれています。また、ジムニーのクロスカントリー走行時におけるダンパーオイルの油面揺らぎによるエアーレーションもキャビテーションの要因となりますが、ガス室完全分離型ダンパーはエアーレーションの発生も抑制します。さらに、ビルシュタイン社製シリンダーは冷間圧延製造による大量生産品でありながら、高剛性を有し、ダンパーストロークによる圧力変化時にも歪みにくく、性能を重視した設計となっています。単筒式構造によりピストン径が大きいため、オイルの通過量が多く、素早い減衰力を発生させやすい特性を持っています。さらに、ピストンを接続するピストンロッドには上質なメッキが施されており、オイルシールへの摩擦低減と耐久性の向上を実現しています。 ダンロップ・グラントレックXS1/185/85R16をセット。MTタイヤとATタイヤの中間のようなスタッドレスタイヤ。トレッド面の圧力分布が気になるタイヤです。ステアリング操舵時...

JB64WのM/Tクラッチのトラブル

JB64W型の車両、走行距離14,775kmのユーザー様より、車両の加速不良に関するご相談を頂戴し、点検を実施いたしました。その結果、クラッチの接続不良が確認されました。トランスミッション外観よりクラッチの異常摩耗が疑われたため、トランスミッションの取り外し作業を行い、クラッチの詳細な点検を実施したところ、クラッチディスクの摩擦材が異常に摩耗していることが判明いたしました。ユーザー様へのヒアリングにより、半クラッチ接続操作の習熟不足が本問題の要因である可能性が示唆されました。 クラッチディスク摩擦材はリベット接合により固定されています。摩擦材の摩耗によりリベットが露出すると、クラッチディスクカバーおよびエンジン側フライホイールに深刻な損傷が生じます。異常加熱は、クラッチカバーやフライホイールの歪み、トランスミッションのオイルシールの損傷を引き起こす可能性があります。 クラッチカバーのディスク当たり面には、斑点状の異常加熱の痕跡が認められます。相当量の熱が加わったものと推測されます。 エンジン側のフライホイールには、斑点状の異常加熱の痕跡が確認されました。フライホイールの面は、ストレートエッジを用いて歪み点検を実施した結果、歪みは認められず、再使用が可能と判断されました。 クラッチディスクの摩擦材の残骸を採取いたしました。その量は相当量に上ります。最悪の場合、クラッチディスクは完全剥離損傷に至っていた可能性がございます。4x4ローギヤセッティングの場合、低速ギヤで低速走行時のエンジン回転数も同様にクラッチ異常摩耗を引き起こす可能性があります。したがって、アクセル操作を注意深くコントロールすることが推奨されます。 トランスミッションのベルハウジングにクラッチディスクの摩擦材が堆積しておりました。摩擦材ダストはグリース、ベアリング、シャフトスプライン等に対して攻撃性が高いため、これら全てを洗浄し、クラッチ交換オーバーホール組み付け作業を完了いたしました。試走において、クラッチ接続の確実性が回復いたしました。

JA22Wフロントアクスルハブのオーバーホール

  長期間の使用により、部品の劣化が見られます。過去の整備履歴は不明ですが、初めてオーバーホールとなる可能性も考えられます。JA22Wのフロントアクスルハブオーバーホールは、フロントタイヤの回転を担うホイールベアリングと、操舵を担うステアリングナックルのオーバーホールとなります。アクスルリジット4x4システムのため、ドライブシャフトはアクスルチューブ内に収められています。ドライブシャフトはCV等速ジョイントを採用しており、ステアリングナックルにグリースを封入する必要があります。また、ホイールベアリング、キングピンベアリングも交換し、グリースパッキングを行い、最適なコンディションで組み立てます。 フロントホイールハブオーバーホールでは、ブレーキディスクローターも取り外し、点検を行います。ブレーキパッドが接触する面に錆や劣化が見られ、摩耗が進んでいる場合は、新品のブレーキディスクローターに交換いたします。これにより、ブレーキパッドの接触面が復元され、確かな制動力を確保し、安全性を高めることができます。 分解した部品は洗浄し、補修が必要な部分は補修パーツを用いて交換いたします。その後、部品を綺麗に組み立て、機能確認を行います。 アクスルの端にあるボールは、ステアリング操作時に擦れる部分であるため、簡易塗装を施しておきます。地肌が露出していてもグリースアップされているため、錆びる可能性は低いです。ただし、放置時間が長い場合は注意が必要です。 その他アクスルパーツの塗装剥離が多数確認される場合は、シャシーブラックにて簡易塗装を実施いたします。また、ステアリングロッドエンドの点検を行い、必要に応じて交換いたします。お客様のご予算に応じて、点検分解整備も承っております。 スズキ純正部品のブレーキディスクロータです。組み付け後、4WD化のためのフリーハブの動作確認を行います。当時のジムニーは、4WD化のため降車し、フロントハブ中央のフリーハブダイアルを操作して「Lock」を選択する必要があります。この際、ダイアルの回転不良が発生すると「Lock」状態にできないため、オフロード走行時に4WD化が困難となり、走破性が低下する可能性があります。そのため、定期的な点検が重要となります。 リヤサスペンションアームのブッシュ交換を付帯整備として実施いたしました。本部品は、カラーにゴムブ...

JB23W-8型 エンジンチェックランプ点灯にて点検診断

コンビネーションメーターのエンジンチェックランプが点灯し、点検依頼がありました。エンジンチェックランプは、エンジン制御に関わる各センサーの異常を警告するものです。SDT診断機(スズキダイアグノーシステスター)または車両の診断モードを使用することで、異常が発生しているセンサー系統を特定できます。診断コードには、触媒劣化の記録がありました。排ガス浄化装置の触媒劣化により、A/FセンサーとO2センサーに基準値外の電位差が生じており、触媒劣化が診断されました。このコードはフェイルセーフはされないため、異常コードの記録はエンジン保護制御には影響しません。再点灯の可能性を考慮し、O2センサーを交換しました。触媒は非常に高価であるため、現状では交換を見送りました。根本的な故障要因は、走行距離が過大であるため、エンジン燃焼状態やエンジンコンディションが悪化し、排気ガス中のカーボンスラッジが増加し、触媒エリアに堆積していると考えられます。また、エンジン燃焼温度の異常なども考えられます。660ccエンジンの小排気量であるジムニーは、タイヤや車両重量の増加により、エンジンに過酷な環境なのです。 ステアリングホイールの振れ点検依頼もありました。タイヤをチェックすると、トレッド面のブロックが段減りし始めていました。転がり抵抗に影響が出ます。タイヤの振動もステアリング系統に影響を及ぼします。ジオランダーG003/MTタイヤはトレッドブロックの段減りが進行しやすい傾向で、早期に交換すると良いでしょう。 点検の結果、ステアリングリンクロッドエンドを全て交換いたしました。ステアリングギヤボックスからアクスル左右端ステアリングナックルへ接続されるロッド(棒)の端部にはボールジョイントが装着され、ナックルに接続されております。ボールジョイントの可動域が摩耗するとプレロードが低下し、ステアリング系統の位置が不安定になるため、ステアリング振れの要因となると考えられ、交換作業とさせていただきました。ステアリングギヤボックスは、ラダーフレームに装着され、ロッドを介してステアリングナックルを操舵するため、ステアリングの応答性に劣る構造となっています。そのため、定期的なオーバーホール品への交換をお勧めいたします。