JB74W-1型車両、走行距離10万キロメートルにて、スタートシステム点検の表示が確認されました。現象は警告表示と時折、エンジンが停止しないなど。車両を点検入庫させ、エンジンスタートストップスイッチを数回操作したところ、マルチディスプレイにシステム点検必要表示と警告灯の点灯が確認されました。また、DTC(ダイアグノーススコード)の検出も確認されました。電子制御装置の動作確認は、SDT2(スズキスマートダイアグノーシステスター2)ソフトウェアを用いて点検確認作業を実施し、PC画面に情報を一括表示することで、早期に異常箇所を特定することが可能です。電子制御装置の項目は全て確認可能ですが、項目数が多く、診断機器を用いた点検方法が重要となります。
ダイアグコードは、スタートスイッチ系統の異常を示唆するものでした。診断ソフトウェアは電子制御装置の動作のみを確認するため、ダイアグコードに基づき故障整備のフローチャートはサービスマニュアルを参照し、作業者の整備ノウハウを活用して特定していきます。早速、スタートスイッチの内部スイッチの動作を確認したところ、内部の2つのスイッチが正常にON/OFFされないことが確認されました。これが、異常コードとして検出された原因と考えられます。
新品のスタートスイッチに交換後、SDT2診断ソフトの画面上でスタートスイッチを操作し、内部スイッチのON/OFF状態をPC画面上で確認しました。異常なく動作を確認し、警告表示もなく正常に復帰しました。スタートスイッチの点検手順としては、スイッチ交換前に接続配線の抵抗測定、導通、地絡点検がサービスマニュアルに記載されています。配線に異常がない場合は、スイッチ単体の点検を行いNGの場合は交換を実施し、それでも問題が解決しない場合は、ボディーコントローラーモジュール(BCM)の交換を検討します。BCMはボディー架装系のコンピューターであり、高額な部品となります。当然ながら、基本的にはサービスマニュアルに従って作業を進めますが、車両の経年数、過走行状況、電装品のカスタマイズなどを考慮すると、ワイヤーハーネスの異常やBCM本体の異常は発生しにくいと判断し、まずはスタートスイッチの交換を実施しました。電子制御装置のワイヤーハーネスやコントロールモジュールは、高い信頼性を確保して設計・製造されているため、他者の誤った整備やカスタマイズ以外で突然異常が発生することは極めて稀です。また、現行のジムニーはバンパー交換(ミリ波レーダーの脱着は認可された特定整備事業所で作業しなければいけません。当店は特定整備事業所として認可を受けています)や下回りセンサー類、ECUのカスタムなど電子制御装置を適正に対処しなければ、異常ダイアグコードとして検出されます。
交換されたスイッチの分解作業を行いました。車両修復においては、ここまで分解する必要はございませんが、構造上の特異点については可能な限り分解し、確認したいと考えております。スイッチは多数のプラスチック部品で構成されておりますが、分解作業に必要な工具は、わずかに細めのマイナスドライバーのみでした。プラスチック成形技術の高度さが伺えます。最終的にスイッチ基盤の分解には至りませんでしたが、基盤上に配置されたスイッチは、2つの部分が押下される構造となっており、その間に極小のLEDが配置され、ボタンの照明機能を担っていました。防水性能は全くなさそうでした。
ボタンの下にはコイル線が配置され、その下には基盤が配置されています。コネクターピンはケースから突出しています。基盤上に搭載されている電子部品は小型で、複雑な回路を形成しています。ICチップも搭載されており、電子制御部品として機能しています。そのため、SDT2診断ソフトウェアを用いてOBD点検を実施しなければ、故障原因の特定が困難です。